くまさんの「新ふるさとづくり宣言」

 八幡市は、歴史文化・自然・地理的条件など多くの優れた”お宝”(資源) を持っています。 世界遺産級の石清水八幡宮を頂点とする寺社や史跡、かつて見られた松花堂昭乗をはじめとする卓越した文化人らの活躍。 男山の悠久の森や木津川・宇治川・桂川の三川が合流して青い水の淀川となり、古来、水陸交通の要衝として、また、幾多の戦場となった地政学的にも重要な地域です。 こんな八幡のまちは、ワクワク、ドキドキの隠れた見どころも一杯。 まちじゅうまるごと博物館=エコミュージアムそのものです。

1.エコミュージアムとは?

  エコミュージアムとは、その地域固有の魅力を掘り起こし、まちづくりに活かしていくための仕組みと活動のことをいいます。  地域やまち全体をまるごと青空博物館に見立て、地域の魅力的な資源の再発見や学習・研究保全・展示活用を行い、まちの活性化に役立てることを目的としています。  エコミュージアムという言葉は、エコロジー(ecology、生態学)とミュージアム(museum、博物館)を組み合わせて新たに生み出した造語です。日本では、「生活環境博物館」と意訳されています。フィールドミュージアムとも呼ばれます。  従来の博物館では、現存するモノの一部を切り取り蒐集し、博物館という入れ物のなかに納めて展示陳列、保存するのに対し、エコミュージアム(=フィールドミュージアム)はあるがままの状態でまるごと展示保存します。  また、従来の博物館は、モノが主体なのに対し、人間が主体です。ひとの記憶や伝承なども展示保存し、運営も市民が主体となります。

2.エコミュージアムの構成要件は?

 

エコミュージアム左の図を見てください。 

 (1)コア(中核)施設  これは、従来の博物館に相当する施設です。  ここで扱う機能は、総合インフォメーションセンターや研究所、学校、保存センターなどの機能を持つ事務局/調査研究・蒐集保存・展示・情報サービス・ライブラリー/レストラン・ショップなど利用者サービス/教育普及・学習支援・人材育成援助など。

 (2)サテライト施設  市内に散在する地域ごと、分野ごと、テーマごとの各サテライト(衛星)施設。まち全体が博物館だとすると、地域の各施設は分館に当たります。  既存の公共施設/自然資象となります。  上の図では、天王山、三川合流・淀川流域と背割堤、市駅周辺、男山、放生川、旧東高野街道沿線の寺社などがひとつのサテライトで、男山・淀川上流域エコミュージアムと呼ぶことができる「八幡の顔」(シンボル)となる地域です。  また、そこから南に行くと、松花堂や八角堂、西車塚古墳、さくら公園、円福寺、洞ヶ峠、美濃山の竹林や古墳群などのサテライトがあります。  東部田園地帯に行くと、流れ橋や市民スポーツ公園、石田神社、伊佐家などのサテライトがあります。

(3)発見の小径(ディスカバートレイル)  上の図の、市北部と南部、東部にある3つのサテライト(分館)を結ぶ回廊が「発見の小径」に当たります。  回廊では、展示物に対して、より理解を深めるための情報を提示します。  案内サインや五感を楽しませるためのいろんな仕掛けを用意します。  旧東高野街道や男山の散策路、木津川サイクリングロード、田圃のあぜ道などがこれに当たります。

3.エコミュージアムの8つの特徴

 エコミュージアムは、次の8つの特徴(基本的な考え方)があるといわれています。 (1)住民と行政のパートナーシップ~市民協働・市民参画が運営の前提条件であること。 (2)自らを映し出す鏡~エコミュージアムは、展示や活動のなかに自己を映し出し、自分自身のアイデンティティを創造していく場であり、来訪者に共感を与えるもの。 (3)人間と自然の表現~共生の考えにもとづき、地域特性を活かした地域アイデンティティを創っていこうとするもの。 (4)時間の表現~地域で培われてきた人々の体験と遺されてきた記憶を、世代を超えて共有し未来を展望していこうとする時間の博物館。 (5)空間の解釈~行政区などの境界とは関係なく、一定の文化圏を領域とする空間を有機的につなげ、再構築していこうとする空間の博物館。 (6)地域発展のための研究所~様々な学問を横につなげ、研究成果が地域の振興・発展に役立つ研究所。 (7)地域を知り、担い手を育む学校~自分たちの生活や環境を豊かにするために学び、人材を育て、地域に根差した生産成果を上げるための学校。 (8)地域の文化遺産や自然資産などの保存機関~ものだけでなく生活や文化、記憶など地域の魅力をあるがままに保存し、育てその価値を広く伝えていくための保護育成センター。

4.エコミュージアムの歴史は?

 地域活性化、地方分権策の切り札   

 1960年代後半から70年代にかけて、フランスの博物館学者ジョルジュ・アンリ・リヴェールやユグ・ド・ヴァイーヌ・ボアンらが提唱したことが始まりです。

  時代背景としては、フランスのポンピドー政権下で高度成長による人口や産業の都市集中と地方の過疎化が進み、これを打開するために、地域を見直し地元から産業を再興していこうとする地方分権策の一環として実施されました。

 当時の環境大臣の意見を採り入れて、全国に25の地方自然公園をつくり、エコミュージアムという新しい博物館づくりに取り組みました。  1971年ICOM(国際博物館会議)で初めて公の場で用いられました。 日本には、新井重三氏が紹介。「生活環境博物館」「地域まるごと博物館」といわれ、フィールドミュージアムまたはエコミュゼと呼ばれることもあります。

5.わが国の事例は?  

 わが国最初のエコミュージアムは、山形県朝日町エコミュージアムで、住民参加を重視した取り組みを行っています。

 エコミュージアム研究会→住民運動→行政も参加 →まちの基本構想に盛り込む、という経過をたどっています。

 ビタミンαミュージアム~笠置町・木津町・和束町・南山城村の3町1村にまたがる地域を4自治体が共同運営しています。

 岐阜県郡上市(=写真左)~八幡町「水と踊りのまち」(「開発後進町」を逆手に取った「懐かしいまち」)/大和町「古今伝授の里フィールドミュージアム」(無から有を生み出したまち)  

 

 


大阪・平野区~まちかど博物館